うつくしき少年少女のために
あの雨のなかでいちばん悲しさうな一粒を僕にくれたあの子へ
初少女の夢が赤裸々なほどビスクドールの瞳が動く
わたし今なら撃ち拔かれてもかまはないあはは冗談うふふ本當よ
櫻見て桃見て君を想ふだけ盜まれたのは三色菫
かなしき夜まくらもとに怪盜が眠りだけを盜んでいつた
少年の務めはカメラ・オブスクラ描いても眞つ黑掻いても、眞つ黑
わかつまで
花嫁のヴェールの裾でひつそりと執り行はれる蟻の葬列
「婚禮は最後の儀式にあらざるを」花嫁よ唯微笑みたまへ
だつて運命だつたんだものジュリエット薔薇が薔薇でしかなかつたやうに
協會に響くあなたの足音のただそれだけでもくれたらいいのに
お魚が水より他にないやうにただただ女であるわたくし
君がただただ男であるよろこびは魚眼レンズを覗いて解る
薔薇々々交差点
できませんもう無理ですとおつしやらず進まなければ御あとがつまる
~青薔薇の花言葉「不可能」~
あいしてるゆるせないどうかここにゐてああゆるせないどうかあいして
~黄薔薇の花言葉「嫉妬」~
永遠の愛をうたつた赤い薔薇「危險」「止まれ」と警告をする
頂いた花はお返し致します信號機が止まれといふので
どんなに白い白い薔薇でもいづれ生々しく熟れてしまふもの
~嫉妬に狂った女のために~
飽食リストランテ
お眼鏡をはづしたのならその本の頁をめくつたやうに愛して
鳥かごに鍵はかかつてをりませんゆくもおはすもあなたの自由
盲目のお馬に乘つて何處までもゆける私はあなたのとりこ
どちらでせうはじめに愛を持ち出して繋げて捉へて逃げ出したのは
目も耳も手足も髮も血管も鳴き聲までもすつかり食して
シルバーがすつかり綺麗に磨かれてあとはあなたと愛し合ふだけ
病
無菌室君は入室禁止ですあいはけがれているものだから
この部屋の外に出たつてあてもない科學者たちの「致死量の愛」
百年後のことなど知らないけれどあなたの脈は私がはかる
左樣ならを決めると電話が泣き出して早くやんで永遠のやうに聞いているだけ
もう誰も觸れてくれるなといふ女へしめやかに今、雨の抱擁
この海はもはやあなたを縛らない傷つけもしない救ひもしない
角砂糖みたいな病室で其れがうみ落とされる不思議について
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